第3章 日本海重油汚染対策ダイビング協議会の解散
会計報告の項で報告したように
97年7月2日時点で、現金1,367,736円が協議会の財産として残っていました。
「クリーンアップ越前」は、協議会の活動の一つとして行ったもので、協議会の活動は重油清掃作業の他にも、重油流出事故に伴う海洋汚染の継続的な監視活動や、水中生物への影響調査など今後も継続して行こなう活動もいくつか考えられます。
組織をどうするかについては「クリーンアップ越前」を終了し、その後の現地の様子を見た上で、「クリーンアップ越前」で中核的な活動をしてきた、「越前ダイビング協会」「PADIジャパン/A・W・A・R・Eプロジェクトチーム」「スクーバダイビング事業協同組合」「日本スクーバ協会」「Cカード協議会」と打ち合わせを行い、決定することとしました。
1997年8月13日 組織解散を決定!
ダイバーズクリーンアップ日本海の組織を今後どうするかについて、97年8月に会議が開催され、組織の解散を決定した。以下その会議の要約。
会議開催日時 | 1997年8月13日(水) 午後3時より |
開催場所 | (株)PADIジャパン会議室 |
出席者 | スクーバダイビング事業協同組合 事務局長 | 福田秀人 |
日本スクーバ協会 副会長 | 中野龍男 |
日本スクーバ協会 事務局長 | 田代泰雄 |
Cカード協議会 会長 | 岩本茂男 |
(株)PADIジャパン 代表取締役社長 | 宮下高行 |
〃 AWAREプロジェクト | 越野一彦 |
会議での決定事項
- 「日本海重油汚染対策ダイビング協議会(ダイバーズクリーンアップ日本海)」は、解散する。
- 最終的余剰金については、ダイビング環境整備に役立てていただきたい趣旨を添えて、越前町役場に寄付する。
- 「クリーンアップ越前報告書」は増刷を行い、クリーンアップ越前に参加したダイビングショップ等に各1部無料で配布する。
会議で出た意見等
◎越前海岸の現状
越前海岸の現状について以下のような簡単な報告があった。
- :現在も、砂の中や、岩の間には重油が残ってはいるが、当初予想していたよりもずっと早く水中環境が回復しつつある。
- :重油汚染被害回復に関する様々な研究データがあるが、自然を回復させるの方法について何が最も有効かということは、現状では確立されていない。
- :自然環境保護という観点から見れば、重油を分解する微生物(自然界に存在する)の活動を活発にすることができれば、それが最も望ましいと考えられるが、人工的に手を加えることによって微生物の活動を阻害あるいは死滅させてしまう可能性もある。従って、今後は人工的な重油除去作業は適切ではなく、自然の回復力に依存することが望ましい。
◎組織の「存続」「解散」について
新たな作業を行わないとすれば、組織は存続すべきか否かについて以下のような意見が出された。
○存続すべきという意見の例
- 今後も同じような事故が起こらないとは言えない。もし起こったときに新たに組織を立ち上げるのは大変であることから、事務局は残すべき。
- 日本海重油汚染対策という限定的な目的から、海の環境保護という拡大した目的を持つ組織に改変し、組織を存続し継続的に活動すべき。
○解散すべきという意見の例
- :日本海重油汚染対策という事で義援金を集めたので、お金を出してくれた方々の気持ちを考えると、新たな活動のための資金とするのは趣旨に反することになるのでは・・・・。一度区切りをつけるべき。
- :組織は本来、その目的とすることを達成したならば区切りをつける意味でも一度解散すべき。万が一同じようなことが起これば、今回の経験をふまえて再び組織を立ち上げることは可能だろう。
その他様々な意見があったが、結果としては解散すべきという意見が大勢を占め、組織を解散することとした。
◎余剰金が多く残ったことについて
義援金の総額に比べ、比較的多くの余剰金が生じたが、それは以下の理由により義援金からの支出を可能な限り絞り、活動した組織自身が労力にプラスして経費をも負担した事による。
- :当初、重油汚染被害はかなりの長期間、広範囲にわたると予想していた。従って、越前海岸以外の地域でも同様の「クリーンアップ」を行わなければならない可能性が高かった。
- :組織を発足させる段階で、どのような費用を義援金の中から支出して良いかの打ち合わせがなされなかった。
- :まともに全てを支出すれば4月20日の「クリーンアップ越前」だけでもまかなうことができない支出が生じ、赤字になってしまうことが明白であった。赤字が生じた後に、赤字分を補填する為にあらためて義援金を集めることは現実的には困難である事が予想された。
◎組織解散に伴う余剰金の処理について
余剰金の処理については様々な案が検討されたが、結果として越前町役場に寄付することとした。その理由は以下の通り。
- :広くダイビング業界・ダイバーの方々から集めた義援金である事から、任意団体、株式会社等の収益を目的とした法人に寄付を行うのは適切ではない。
- :公益目的の認可組織であっても、ダイビング関係から集めた義援金であることを考えると、ダイビング環境の向上に役立ててもらえる可能性の高いところに寄付を行いたい。
◎報告書の無料配布について
「クリーンアップ越前」ボランティア活動に参加した、ダイビングショップ等より報告書を入手したい旨の希望が届いていることについて検討の結果、ボランティア活動参加ショップ等に限って報告書各1部を無料配布することとした。
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