安全ダイビング
「レジャーダイビングの安全性向上に向けて」Cカード協議会からの提言です。ここに開催した内容は、Cカード協議会が「第4回日本高気圧環境医学会関東地方会総会論文集」兼「第6回小田原セミナー論文集」に投稿した内容を掲載したものです。(当協議会の概要部分は省きました。)
安全管理の基本的考え方
レクリエーションダイビングの安全性を向上させる方法は、難しく高度な知識やテクニックを必要とするやり方ではなく、「誰でもが実施可能な方法を、広く普及させる。」事である。 高度な知識や技術を必要とする方法は普及が困難であり、またいざという時に役立たない事も多い。 誰でもが実施可能な方法を確実に実践する事こそ、ダイビングの安全性向上に寄与出来る方法である。
ほとんどの安全対策は初級レベル講習に網羅
レクリエーションダイビングにおける安全対策のほとんど全ては各指導機関の「初級レベル講習」の中に網羅されている。 初級レベル講習では「器材の取扱方法と必要なスキル」、「安全にダイビングを楽しむ為のルール」を教えており、この段階で習った内容を確実に実施する事が、ダイビングの安全性向上に役立つ。
ダイバーが実践すべき事
良いダイビング習慣
良いダイビング習慣を身につけ、常に実践する事が重要である。往々にして、講習の時だけやって、実際のダイビングではおざなりになりがちではないか。 「潜水計画の立案」、「バディシステムの遵守」、「エントリー前の装備のチェック」、「適正ウエイトのチェック」、「水面到達時の浮力確保の手順」、その他数々の安全ルールを習慣として身につけ、常に実践する事が必要である。
自然環境に対して臆病であれ!
「プレッシャー、ストレス」はパニックの種であり、プレッシャーやストレスのないダイビングを心がける事がパニック防止のキーである。ストレス下での小さなトラブルは、大きなトラブルへと連鎖し、パニックへとつながる。 ストレスの無いダイビングを心がける為には、波や潮流など自然環境に対して「怖いと感じたら潜らない」、「頑張らない」という心構えが重要。 楽しむための「遊び」であり、「怖い思い」や「辛い思い」をするべきではない。 多くの探検家は自然環境のリスクに敏感であり、自然環境と戦うような方法を避けている。
サービス提供者が実施すべき事
「良いダイビング習慣」を実践させる
ダイビングサービス提供者(ガイド等)は、ダイバーに「良いダイビング習慣」を実践させるためのアドバイザーであるべき。もし、安全ダイビングルールを実践しないダイバーに出会ったら、丁寧にアドバイスを与える事。 ガイド付きツアーでも、常にバディシステムを実践させる。バディコンタクト、バディ同士で深度と時間のチェック、等々行っていない場合は、注意を与えるべきと考える。 水面到達時の浮力確保手順等も、間違っている場合はその都度注意してあげる事が必要。 ダイビングの都度、安全ルールや手順を実践してもらう事によって、「習慣として身に付く」事が可能となる。
環境の判断はチーム固有の要素から
海況が穏やかでない場合、ダイビングを実施するか否か判断に迷う事がある。 ダイビングが可か否かを判断する材料は、チーム固有の要素から判断すべきである。チームとしてのダイビング能力レベルが、その自然環境に適しているか否か、それが最も重要であり、「他のチームが潜っているから。」という事を判断基準にすべきではない。チームとしての能力レベルはそのチームごとに異なっている。
ダイバーのストレス管理
ダイバー一人一人のストレスレベルを常に把握する事が重要である。 前にも述べたように、ストレスはパニックへと連鎖する。担当しているダイバー達一人一人のストレスレベルを常に把握している事が事故予防に役立つ。
常に先を予測する
ガイド中も、常に先を予測し、チーム全体の先の姿をイメージし、シミュレーションしながらガイドする。考えられるリスクに対してその回避方法を常に考え、必要に応じて、ダイビング中であっても潜水計画を変更する。
ヒヤリ、ハットを無くす
一度でも「ヒヤリ、ハット」を経験したら、二度と「ヒヤリ、ハット」を起こさないためにどうすべきか、同僚達と意見を交わし、具体的なアクションプランをつくって実践する。 「ヒヤリとしたが前は大丈夫だった。多分また大丈夫だろう。」という考えが、いつか事故を引き起こす。
気になっている事
事故事例学習の困難さ
事故事例を学習する事が、事故防止に大変重要である事は言うまでもない。しかしながら、事故当事者への「損害賠償請求」、「刑事責任追及」および周囲への配慮等から、詳細な事故情報の開示が出来ず、事例の十分な学習を行えないのが実情。 航空機事故では、十分に事故事例を学習できるシステムがあり、同じ種類の事故は二度と起きないとされている。
中高年ダイバーの健康管理
中高年ダイバーの事故事例から、「固有の身体的トラブル」が疑われるケースが増加しているように感じられる。この事から「若い人達と同じ健康チェックルールで良いか?」という疑問がある。 少なくとも、毎年の健康診断をして頂くような業界ルールーが必要ではないか。
ダイブコンピューター
「コンピューターの指示に従っていれば、絶対には減圧症にかからない。」と信じているダイバーが多いと思われる。 しかし現実には、コンピューターの許容範囲内であっても減圧症は発生している。 こうした事から、「ダイブコンピューター使用のためのガイドライン」などを策定し、広報する事が必要と感じている。
ローカルルール
ダイビング活動を行う地域の環境によって「地域固有のダイビングルール」が必要となる場合も有る。 しかし、ローカルルールは当該海域を利用する多くのダイバーの理解と協力を得て策定されるべきである。 ローカルルール策定関するC協の考え方は、以前からホームページに掲載しており、その要旨は下記の通りである。
【ローカルルール策定の要素】
●地域固有の自然環境に起因した安全ダイビングのためのルール。
●地域固有の環境を保護するのためのルール。
●地域生活者との調和を目的としたルール。
上記の要件は地先ごとに異なるものである事から、ルールは地先ごと環境に合わせて策定されるべきである。 広範地域に適合する安全のためのルールは、すでに多くの指導機関が定めている。
以上