第2章 「クリーンアップ越前」までの経緯
2−1 重油流出事故とダイビング業界の動き
◎タンカー「ナホトカ」の沈没と重油流出
ロシア船籍のタンカー「ナホトカ」(一三、一五七トン、乗組員三十二人)が一九九七年一月二日未明、荒天のため島根県隠岐島沖で沈没。積んでいたC重油一万九千キロリットルのうち約三千七百キロリットルが流出した。
船体は二つに折れ、船首部分が重油を流出しながら時速約二キロで南東へ漂流し、海潮流や季節風の影響で事故から五日後の七日、流出重油とともに沈没現場から約二百五十キロ離れた福井県三国町の海岸に漂着した。残る船体は、隠岐島の北北東約百十三キロ地点に重油約一万五千キロリットルを積んだまま水没したとみられる。重油流出事故としては昭和四十九年、三菱石油水島製油所事故の約七千九百トンに次ぐ大規模な事故となった。
◎重油汚染被害と一般からの支援
漂着した重油は、海岸を汚染し重大な水産業への被害をもたらした。三国町を中心とする重油汚染被害はは連日ニュースで報道され、こうした被害に対して全国各地から「義援金」が寄せられ、また現地の重油除去作業を支援すべく多くの「ボランティア」が活躍した。(流出した重油は、その後「福井県」「石川県」「新潟県」の沿岸各地に漂着し、広い範囲にわたって重油汚染被害を引き起こした。) 日本海をダイビングフィールドとして利用している一部のダイビングショップやダイバーの方々も積極的にボランティアとして重油除去作業に従事した。
◎ダイビング業界としての対応
「海」を活動のフィールドとして使用している「ダイビング業界」としても、何らかの支援をしなければならないと感じ、まずはどのような形にでも変えることの出来る「義援金」を集めることとした。
◎ダイビングフェスティバル期間中の動き
97年1月30日(木)〜2月2日(日)に東京ビックサイトにおいて日本スクーバ協会が主催する「ダイビングフェスティバル」が開催された。この期間中に「日本スクーバ協会」「スクーバダイビング事業協同組合」「レジャーダイビング認定カード普及協議会(Cカード協議会)」が共同して「義援金」の募金活動を行ない、またこの三組織とこれまで自主的にボランティア活動に参加してきた複数の「ダイビングショップ」との間での情報交換を目的としたミーティングが開催された。
この段階では、「義援金、支援物資、ボランティア」の受け入れ窓口が公共機関各所に設置されており、どこを窓口として支援を実施すべきかが問題となった。
また、ニュースに多く取り上げられている地域には支援物資とボランティアが集中しているが、あまりニュースで報道されていない地域については、被害を受けているにもかかわらず、重油除去ボランティアが集まっていないなどの情報も寄せられた。
その後も、支援の内容について様々な意見があったが、次第に「ダイバーの方々やダイビングショップを中心に集めた募金は被害地域の中でもダイビングに関連する地域」の支援に役立てよう。「自分たちがお世話になってきた海域をきれいにしよう。」という意見が主流を占めはじめた。
そこで日本海の最大のダイビングスポットで、重油被害地域でもある「越前町」で現地の方々の意見を聞くこととした。
★1月21日に越前海岸に重油漂着
◎越前町での第1回目のミーティング
97年2月11日(月)越前町のダイビングサービス「ログ」(福井県丹生郡越前町梅浦114-91)の場所をお借りして、越前町のダイビングサービスの方々に集まっていただき、情報交換を中心としたミーティングを行った。
以下その要約
<現状>
(三国地区)
海岸線一帯はひどかったが、除去作業によりかなり回復。特にビーチポイントにおいては岩場に若干残ってはいるもののエントリー・エキジットポイントをはじめ、さほど海岸線は心配なし。
水中も2〜3m以深は全く影響なし。活動の中心である沖合いのボートポイントも全く問題なしとの事。
(越前地区)
「壁石浜(かぶしはま)ポイント」
エントリー・エキジットポイントは問題ないが周辺の岩場及び壁にはまだかなり付着しており器材の置き場が現在ないとのこと。
「水仙ポイント」
エントリー・エキジットおよび水中は問題ないが浜を歩くとダイビングブーツ等に付着してしまう。
「米ノポイント」
テトラ内に入ってしまっている油が、波の影響で少しづつにじみ出ている状態。ホンダワラ等に付着する前に何とかしたいとのこと。
「長須浜ポイント」
長須浜及び大浜については4月頃役場が砂の入れ替えを予定している。その経過を見る必要あり。
<今後の要望>
- 事実をしっかり伝えて欲しい。特に観光及びレジャーについての風評被害を恐れる。
- 現在のボランティア活動及び各業界、方面からのご支援は非常にありがたいがかなり長期化しそうな傾向なので継続性を持った支援活動が望み。
- 現地の店も、京阪神の店も今は気持ち優先で活動しているが継続して行く為にも金銭面、労力等負担を軽減していきたい。
- ボランティア保険は一人300円を県が負担して加入出来るが、地区によって重油除去活動地域を指定される。ボランティアをするダイバーの人達はできる事なら日頃自分達の良く使う水域、浜、での除去活動をしたいという希望を持っている。
- 今は寒いから重油が固まった状態になっているが、暖かくなると重油が溶けだしてベタベタの状態になってしまう。
- このままではダイビングシーズンにダイバーが来ても、ウエットスーツやブーツに重油が付着してしまう。
- 1回は日時を決めて各地から集まって活動する!といったことを行った方がよい。地元、漁業及び観光組合にアピールする事により今後のポイントの拡大及び理解にもつなげて行きたい。
- 決めた日時の活動以外でも支援ツアーを企画してもらい、ダイビングをしてもらい、足を運んでもらいたい(ボランティア+1ダイブ等)
- 指導機関の区別無く、広くダイビング業界に呼びかけて欲しい。
- 今回のことをきっかけに越前地区での各サービス同志のつながりを更に強くしてしっかりしたネットワークをつくって行きたい。
<決定事項>
- 越前の連絡窓口を1ヶ所に決め、そこから越前町内の関係各所に連絡情報を配信する。窓口を以下のように決定。
「ブルーマリン 川崎氏」
TEL 0778−37−1611 夜間 0778−37−1511
FAX 0778−37−0024
- 各現地サービス最低1週間毎に各浜のレポートを事務局に提出
- 4月20(日)に「クリーンアップ越前」という標語を掲げてボランティアによるダイビングスポット海浜の重油清掃を行う。
- 「クリーンアップ越前」の準備のための具体的な打ち合わせを3月3(月)に行う。
<ミーティング参加者>
○アミューズマリンクラブ ○アクアマリン ○九頭竜マリンダイビング
○シーモア ○ブルーマリン ○ログ ○(株)PADIジャパン
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